« ただいま練習中! | トップページ | 音楽の力 »

2011年10月 3日 (月)

僕の原点

2011年10月3日(月)訪問 佐野市立葛生小学校

<訪問した演奏家>
三浦一馬(バンドネオン)

ミュージック・シェアリングの活動に初参加の三浦一馬さんによるツアー日記です。

-------------------------------------------

空は高く、金木犀が香る気持ちの良い10 月の午後、僕は車を走らせ、栃木県佐野市に位置する葛生小学校へとやってきた。
出迎えてくださったのは、大髙校長先生をはじめとする先生方。廊下ですれ違う生徒さんもみんな、初対面の僕に元気に挨拶してくれる。やっぱり、こういうのはとても気持ちがいいなぁ。
001111003_2


控え室となった会議室で最後のチェック・調整をしていると、ノックの音がする。生徒さんが2人、僕を呼びに来てくれたのだ。綺麗に手入れされた校庭の植え込みを横目に見ながら、渡り廊下を通って体育館の前まで移動する。普段のコンサートも同じだけれど、この瞬間にコンセントレーション、精神統一をする。そして、今日のような学校訪問や講演をするときは特に、「如何に、聴く人にとって等身大のこととして伝えるか」ということを一番に考える。

今日の対象は、高学年にあたる4~6 年生のみなさん。まずは演奏を聴いてもらおう。
恐らくは全員が初めて見るであろうバンドネオン。演奏に入り込んでいても、好奇心に溢れた視線はありありと感じることができる。1 曲目からこうして熱心に聞いてくれるのはとても嬉しい。考えてみれば、僕も小学校4年生のときに初めてバンドネオンを聴いて、「この楽器をやりたい!」と思ったんだっけ。
111003095_2


ここで、学校訪問では必ず行っている、バンドネオンの「解体ショー」(楽器の分解)のコーナー。見た目にも不思議なバンドネオンの中身・構造がどうなっているのか見てもらう。ここでも生徒さんからは「わー!」という嬉しい反応が。
111003051_2


普段は中学校や高校への訪問が多いこともあり、そこからバンドネオンの起源やタンゴという音楽について、更にアルゼンチンの文化などにも踏み込んだ発展的な話をするのだが、今回は僕がバンドネオンと出逢ったときのことや、それ以降どのように歩んできたのかといことを中心に据え、演奏を交えたり、また、スクリーンに投影した写真を使ったりしながら、ささやかながらの“自分史”を話させていただいた。まさに僕がバンドネオンをはじめたのと同じ年代、少しでも何かを感じてくれれば、と思ったのだ。

僕が事あるごとに言うのは、「実は全てが繋がっている。そして、そのことは決して特別なことではない」ということ。バンドネオンをはじめた10 歳のときから今日までというのは、一つひとつを積み重ねてきた結果であり、その度に応援してくれる人がいた。それは誰しもが同じで、だからこそ、たった一つのことでいいから自分の好きなことやり“続けて”欲しいと、拙いながらも僕からの願いとしてお話した。
111003144_3


生徒からの質問コーナーで、「弾いてみてもいいですか!?」と、とびっきりの笑顔で聞いてくれた子がいた。前に出てきてもらい、バンドネオンを持たせると…楽器がとても大きく見える。
僕も昔は大きなバンドネオンを一生懸命弾いていて、椅子が高すぎるため、重ねた電話帳を足台にしていたことを、このとき鮮やかに思い出した。
111003140_3


「大人の音楽」― 特にタンゴなどはそう呼ばれることが多いけれど、こうして子どもたちの前で演奏をすると、そんなものは関係ないのだと改めて気づく。どんな音楽であろうと、それが素晴らしいものであるならば、彼らは目を輝かせて真剣に聴いてくれる。そう、10 歳の僕がそうであったように。

日々の忙しさに追われてつい忘れがちなその気持ち― 僕の“原点” ― を、今回の学校訪問でも確かめることができた気がしている。

三浦一馬(バンドネオン)

-------------------------------------


佐野市立葛生小学校では、2010~2011年度の2年にわたり、計4回(ギター、雅楽、弦楽四重奏、バンドネオン)の訪問コンサートを実施しました。
当プログラムにご協力いただいた皆様にこの場を借りて御礼申し上げます。

ミュージック・シェアリング事務局

|

« ただいま練習中! | トップページ | 音楽の力 »