国立病院機構 福島病院/訪問コンサート
こんにちは!
11月に入り、いよいよ寒くなってきましたね。
冬の足音が聞こえてくるようです。
さて、10月に訪問した福島病院でのコンサートのご紹介です。
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2017年10月18日 訪問コンサート
国立病院機構 福島病院
<訪問した演奏家>
沢井一恵(筝)
さわい筝アンサンブル
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*さわい筝アンサンブルのメンバーより、文章を寄せていただきました。
音楽の力。今回のmusic sharingではその強さを思い知った。
事前の連絡で、今回の訪問先の方々はかなり重度の
障害をもっていると聞いていたし、心づもりも
できていたはずだった。しかし、参加してくださる
患者の方々が揃った会場に入っていったとき、私が
受けたショックは決して小さいものではなかった。
何しろ部屋にいる50人位皆が重い症状を抱えているのだ。
頭では理解していたつもりでも、実際に目の当たりにすると、
いつも私が過ごしている世界とは違いすぎる空間に衝撃を受けた。
一恵先生が少し挨拶をした後、早速六段の演奏を始めた。
最初は、声を出している人もいたりして部屋の雰囲気も
なんとなくざわついていた。
この先どうなるのだろうかと思ったのを覚えている。
しかし、演奏が終わった頃には気づいたら雰囲気は
落ち着いていて、というより、むしろ緊張感すらも
伝わってきて、聞いている人たちの耳を澄まして
いるような集中力のようなものが伝わってきた。
その後2曲演奏したが、もう会場がざわついて
演奏に集中できないということは全くなく、
フォーマルな演奏会並に集中することができた。
演奏前には「大丈夫大丈夫」と患者さんから励まして
くれたりして、とても心地よく演奏することができた。
演奏が全て終わった後、実際に箏に触れる体験の時間では、
楽器を持っていくと皆興味深げに触ったり弾いてくれたりして、
予想以上の反応に驚いた。反応すらしてくれないかも
しれないという不安も少しあったからだ。
途中「さくらさくら」を弾いてほしいという要望も出て、
アドリブで合奏し、皆で歌ってもらうなんてこともあった。
看護の方々も普段患者の人たちが見せない表情や動きだ、と
とても喜んでくれた。
無事全て終わり、帰途についた私はふと考えた。
何が今回の患者の方々をあんなに生き生きとさせたのだろうか。
まだはっきりとはわからないが、それこそが音楽の力だと思う。
ここで言っている音楽とは本物の音楽、つまり楽譜通りの
音を出しているだけで終わりの表面的なものではなく、
自身の中で深く吟味し選び抜かれた、洗練された曲想を、
芯のある豊かな音で奏でたもののことだと、
18歳の現在では思っている。
楽譜通りに手が回りダイナミクスを調整したとしても
心を動かす何かを伝えるのは難しいだろう。
つまり理性ではなく感性に訴えないといけないということだ。
もっと根本的な音楽の力が今回の患者の方々の心の芯に
届いたのだと思う。
今回のことはとてもいい経験になった。
関わらせていただけたことに感謝したい。
(小林 甲矢人)
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